えん

2014年8月8日〜2015年9月15日


8月8日、センターから連れ戻されて
8月8日、センターから連れ戻されて
えん
えん


庭で餌付けをしていた猫が交通事故で歩けなくなった、ということでミュウに連れてこられました。実は交通事故ではなく、心臓に血の塊が発生してそれが腰の血管に詰まる病気でした(血栓塞栓症)。持ち込まれた方は面倒を見られないということで、愛護センター送りになりました。その日の午後だったか、翌日だったか、ミュウの関係者数人で確かパンを食べていたような。いつものパーティと違う重苦しい空気の中で会話は自然とあの猫のことに。

「心臓が原因だから先の見通しは暗いですよね」

「あまり永くないでしょうね」

「あの足、どうなっちゃうのかなあ」

「センターでは治療はしないから、多分腐って落ちるかなあ」

「痛いんだろうね、苦しいんだろうね」

「そうなったら安楽死かなあ」

「あの子いい子だったよねー」

「そうそう、子猫を連れてたからメスだと思われてたんだけどオスだったんだよね」

「捨て猫の面倒見てたみたい。優しいんだねー」

「.......」

「.......」

ということで、病院で面倒をみることになりました。

名前は”これも縁”の”えん”。その後腐ってきた後ろ足を断脚し、尻尾の先も自然に落ちて居候猫の一員になります。


上の記事を読んだスタッフからたくさん写真が送られてきました。その一部

おれたち親友な  な!
おれたち親友な  な!

そのころの病院の猫たちは互いに仲が悪かったのですがえんちゃんはどの猫とも仲良くなって、顎の関節を痛めて毛づくろいのできない病院猫の毛づくろいをしてあげたり、自分は犬歯が一本しかないのに、体重が倍もある暴れん坊のポンタと互角に戯れ合っていました。スタッフがたまには外の景色を見せてあげようとしたことがありました。えんちゃんは突然取り乱して暴れ出し、一本足で2階への階段をよじ登るように必死に駆け上がりました。えんちゃんにとっては病院の二階が天国なんだねとその時の私たちは思っていました。しかし、心臓に疾患のある子の定めは突然執行されます。2015年9月15日の夕方、猫たちの食事の準備をして「えんちゃんごはんですよ」と振り向くと横になって手足を伸ばし、わずかに頭を上下していました。厳しい野良猫生活の中で少しづつ徳を積んできた一匹の猫が、天国への階段の踊り場で”えん”という名前をもらい、最後の大仕事をします。誰でも、えんちゃんのことを思い出すと、さみしい、でも、懐かしい、温かい気持ちになります。えんちゃんのことを知っている人の数だけえんちゃんはその人の心の中で生き続けています。私の心の中のえんちゃんはいつも言ってます。「ほら、僕がしたようにしてごらん。」



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