亀吉

9月の末の、暇な1日が終わろうとしていた時、待合室のドアがけたたましく開いて一頭のチワワが飛び込んできた。ウロウロしていて危ないので保護したというカップルはさわれないのでサッカーボール並みにドリブルで運んで来たそうだ。ひどくおびえていて手を出すと噛み付いてくるが、とりあえず、預かることにする。年に数件は持ち込まれる迷子犬は、普通は数日で飼い主の元に帰ることになる。しかし、このカミツキガメ犬には何日経っても飼い主は現れなかった。

朝晩一緒に散歩をするようになると、与えられた餌を受け付けるようになり、すぐにお代わりを欲しがるようになりました。ただ、少しでも触ろうものなら、必死で咬み返してくるので、カラー無し抱っこできるまで1月もかかりました。「これが亀吉です。クロちゃんの後継者です。よろしくね。」散歩の途中で出会った知り合いに紹介するのが日課になり、亀吉も私のうしろからおずおずと挨拶するようになります。こうして自然に、小さな犬の存在が私の一部になり、亀吉にとっても私の存在はその大きな一部になったわけです。


亀吉の朝の散歩は日の出前の1時間ですが、ここのところ毎回、私の気分は後ろ向きです。昨晩も急患があって寝るのが遅くなったので、今朝は絶対サボるぞと決めていたのですが6時近くなると遠くから亀吉が"おとーさーん、散歩いこーよー"と呼んでいるような気がして厚着をしてまだ暗い寒空にゴソゴソと出て行きます。ただ今日は、昨日までとはちょっと違うのです。寒いから、後ろ向きになるのですが、なぜ、寒いかというと、お日様がなかなか出てこないからです。ところが、ここ横浜の日の出の時刻が今日は6時51分、明日は6時50分なのです。そしてその傾向は日の出が4時26分になるまで、あと半年続くのです。またひとつ冬の峠を超えました。

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